母が亡くなって初めての桜の季節。
父にとっては一人でこの季節を迎える寂しさともう一つの寂しさがありました。
運転免許返納し車を手放すことを決めた父
運転免許を返納し、車を手放すことを決めたのです。
そのことを電話で話してくれたのは数週間前でした。
80歳を過ぎたあたりから、私も妹もそろそろやめたらどうかと言っていたのですが、決断してくれるまでにずいぶん時間がかかりました。
大きな事故なく50数年運転を続けてきた父は運転に自信を持っていました。
若い頃は仕事で都内を走りまわり、家族旅行も夫婦二人での旅行もそのほとんどが父の運転する車で行きました。
母の通院、入退院も父が運転する車でした。
母がいなくなり一人になった父は、母との思い出の場所を車でめぐりたいと思ったようです。しかし、出かけた先の道が変わっていて迷ってしまい、辿り着けずに引き返してきたということがありました。
そのようなことが数回あって心身の衰えを実感し、大きな事故を起こす前にと決断したと話してくれました。
一人でお花見に行った上野公園で父は・・・
上野公園の桜が満開を迎えたその日、車の売却の手続きを終えた父は、寂しさを紛らわしたい気持ちもあったのか、電車で1時間半ほどかけて上野公園までお花見に繰り出しました。
予想通りの人混みに圧倒されながら、一人でビールを飲んだり、桜を見たり、行き交う人々の様子を見たりしていたそうです。
それだけで終わらないのがうちの父。
歩き疲れて階段下のベンチに座った父は、隣に座っていた外国人女性に「お一人ですか」と声をかけたというのです。
実は以前にもそんな話を聞いた覚えがあります。その時は「日本語わからないです」と言われて終了だったはず。
「今回もそうなるだろうと思ったけど、奇跡が起きたんだよ」と楽しそうに話す父。
ボリビアから来日して11年で草月流の師範だというその方は、30分ほど父のおしゃべりにつきあってくれたそうです。
食事の誘いは丁重に断られたとのことですが・・・(笑)
見習いたい父のコミュニーション力
父のコミュニケーション力には驚かされます。
道に迷ったり、切符の買い方がわからなかったりしたときはためらわずに人に聞く。そして、親切に教えてもらったり、一緒についてきてもらったり、お礼に食事をご馳走したり・・・
ちなみに父によると、困っている時に親切にしてくれるのはほぼ若い男性だそうです。
先日、テレビのインタビューでコミュニケーションの極意を聞かれた阿川佐和子さんが「『道は人に聞く』という法律を作ったらどうか」と話していました。
まさにそれを体現しているのが父ではないかと思います。
スマホに聞けば大体のことがわかり、他人とコミュニケーションを取らなくても暮らしていくことはできます。
私自身、在宅で仕事をするようになって、直接対面で話すのは夫だけという日も少なくないです。
それで困るということはないし、そのほうが気が楽という面もあります。ただ、いざコミュニケーションが必要なときに、上手く言葉が出ないということが起きてくるかもしれません。
機会が少ないからこそ、その一回一回を相手にとっても自分にとっても気持ちのいいコミュニケーションにしたいと思います。
子供がいない私たち夫婦、一人になるのはどちらなのか、いつになるのかは分かりませんが、一人になったときにどう暮らしていくのか、どんな暮らしがしたいのかを考えておくことは大切だなと一人になった父の話を聞いて感じました。
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